監督:アン・リー
主演:スラージ・シャルマ
あらすじ:虎と遭難した少年が、幾度の困難を乗り越えて助かる話
あらすじに、「~助かる」とあえて書いた。
自分は「なぜ少年は、生きることができたのか?」というCMの文句を聞いて、キレかかった者だが、そこは問題ではなかった。悪しからず。
では、感想を。
簡単に言うと、オデュッセイア物。
故郷(家族)との別れ→苦難→それを乗り越え・・・→人は大人になる、というオーソドックスな流れ。
必ずしもそうではないが、いい物語は、あらすじが簡潔になる傾向がある。
その好例である。
物語は、大人になった主人公パイのもとに、ライターが訪ねるところから始まる。(だから、生き死にを語ることがネタバレにはならない。)
「あなたの奇想天外な経験を是非物語にしたい!」
パイの語る体験が書籍化されたものが、本作品だとすると、「ライフ・オブ・パイ」はメタ構造になっていると言える。
また、最後に救出されたパイが、漂流体験をある人物に聞かれたときに、とある「アナザーストーリー」を語る。
これこそ言い過ぎるとネタバレになるので、気をつけつつ書く必要がある。
端的に言うと、パイは「真実とは何か?」という話を述べるのだ。
あたし自身、「真実」なんてこの世にないと思っている。
記憶や経験は、自分の都合のいいように改められる。
パイの漂流体験も実は、そういうことなのかもしれない。そうでないかもしれない。
そして、「映画もまた編集である」。
「ライフ・オブ・パイ」は、通過儀礼の話であり、物語とは何か?ということを問いかける物語でもあるのだ。
まぁ、美しい映像をごたごた考えず観て楽しい作品なので、できれば映画館で観た方がいいと思いますですよ!
「ゴッドファーザー」などの編集を手がけたウォルター・マーチによる映画編集論。
やや長いが、映画ファン、創作に関わる人は一読の価値あり。
「通過儀礼」という観点から、映画の構造を説明する名著。
これを読めば、名作が名作たる所以がわかる。
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