著者 フェルディナント・フォン・シーラッハ
本職は弁護士。ドイツ人。1964年生まれ。
訳 酒寄進一 ドイツ文学翻訳家。大学教授。
本屋大賞2012年度の翻訳本部門。ドイツでは大ベストセラー作品。タイトルの『犯罪』通り、ドイツを舞台にした犯罪ドラマの短編集。一人の刑事弁護士が主人公で、彼からの視点で物語が進む。ドキュメンタリータッチ。
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フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 2015-04-03
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内容紹介
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした心やさしき銀行強盗。魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描く連作短篇集。文学賞三冠獲得、四十五万部刊行の欧米読書界を驚嘆せしめた傑作!
本書の最大の魅力は、著者の弁護士としての豊富な経験に裏付けされた場面設定とノンフィクションか?って思わせるくらいリアルで、淡々と語る文章。それでいて深みがあって、引き込まれる。東野圭吾ミステリーのような、ドキドキ感はなく、大体思ったとおりに事件は進むし、解決される。主人公も活躍しない。事実を語る。ここが錯覚を起こさせる。
最後に「これはリンゴではない」とフランス語が。
?これは?っておもいネットで調べる。
短編全てに何かしらリンゴが出てくるシーンがある。特に印象を持たせる訳でもなく。そして、最後の文章。
翻訳家のあとがきがネットに出てた。
以下抜粋。
そんな雑談を交えながら、ぼくたちのおしゃべりも最後の話題にたどりついた。それは「リンゴ」だ。『犯罪』には、すべての話にリンゴが出てくる。そして最後のページには「Ceci n’ est pas une pomme.」という一文がぽつんと宙に浮くように印刷されている。「これはリンゴではない」という意味のフランス語だ。
はじめて通読したとき、正直その意味がすぐにはわからなかった。なぜフランス語なのだろう? あっと気づいたのは、編集者のために内容紹介文を作成していたときだ。そのことを話して、真意を質すと、シーラッハさんはにこっとうなずいた。
シュルレアリスムの画家ルネ・マグリットに、同名の絵がある。リアルに本物らしくリンゴを描き、その画面中に上記の言葉を書き添えた絵、「これはリンゴである」という見る側と見られる側の暗黙の了解を身も蓋もない形で露わにした絵だ。シーラッハさんは、ルネ・マグリットがイメージの世界でやったことを文学の世界であらためて形にしたのだ。
ところが、やはり、と胸のうちで思ったぼくに、シーラッハさんはたったひと言ぽつりといった。その言葉を聞いたとき、この11編からなる短編集がまったく違ったものに見えてきた。やられた、というのが正直な感想。その後、これを基に全編の訳文を検討し直したことはいうまでもない。だがこのひと言はここでは明かさないでおこうと思う。なにもかも種明かししては、読んでくださる方の読書の楽しみを奪うことになるだろうから。
言うならば、「これは犯罪ではない」か。そして、1番初めの文章にくる。
実は続編もある。こちらもおすすめ!
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フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 2012-02-18
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